カスタマイズAi助「全ちゃんAI」導入レポート 社員が安心して使える「自社専用AI」とは

「何から手をつけたらいいか分からない」から1年。社員約300名の企業が、社内AI「全ちゃんAI」(カスタマイズ型AI)利用者175名に広げるまで
生成AIを会社に導入したい。けれど、何から手をつければいいのか分からない。相談できる相手もいない。
これは、決して特別な悩みではありません。多くの企業が今、同じ課題と向き合っています。「社員それぞれが個人的に使っていて、会社としては利用状況を把握できていない」「情報管理やセキュリティが心配」「導入しても、一部の社員しか使わないのではないか」。
今回お話を伺った全日本食品株式会社様(社員数約300名、全国に拠点)も、まさにこの課題感からスタートしました。1年後、ジャイロ総合コンサルティングが開発に関わらせていただいた自社専用AI「全ちゃんAI」の利用者は、12名から始まり、2026年9月には175名へ。全社員の半数を超える社員が積極的に使用するまでに拡大しました。
インタビューにご登場いただいたのは、同社のDXプロジェクトと生成AI検討会を率いてこられた村上様。導入前の課題から、社内でAI利用を促進した経緯、そして今後の期待までを率直に語っていただきました。
※全日本食品様ではカスタマイズ版Ai助を『全ちゃんAI』という愛称で開発運用しております。
1. 導入前の状況・課題 「誰が何に使っているか、把握できていなかった」
「正直、社員がAIをどれくらい活用しているかは、会社としてほとんど把握できていませんでした」
AIを使っている人と使っていない人の差も、どんな情報を入力しているのかも見えない。禁止していないが、管理もしていない。多くの企業が現在進行形で抱えている状態ではないでしょうか。
「まず、何から手をつけたらいいか分からない。それが最初の課題でした」
同社が最初に取り組んだのは、各部署に「AIでどんなことをやってみたいか」を聞いて回ることでした。実現可能かどうかはいったん置いておいて、要望を集めることから始めたのです。
「その中から、要望の多かった議事録作成のような簡単なところから始めよう、と決まったんです」
やりたいことは見えた。しかし次の壁がやってきます。それを実現するツテがない。紹介を通じてジャイロ総合コンサルティングの渋谷雄大とつながったのが、プロジェクトの実質的なスタートでした。
2. AI導入の目的と当初の課題 「使っていいよ」と言える環境をつくるまで
AI導入の目的は、業務の効率化と、社員一人ひとりの創造性を高めること。村上様はそう振り返ります。
ただ、最初から自社AIの開発が決まっていたわけではありませんでした。当初は汎用型AIの有料版を社員へ配布する案も検討されていたそうです。それでも会社として本気で活用を進めるうえで、村上様が挙げたのは3つの課題でした。
「これから会社でAIを広めたいと思ったとき、まず一つは安全性でした」
次に出てきたのが、管理の問題です。
「経費をかける以上、管理をどうするか。社内AIを構築したほうがログの管理も含めてやりやすいんじゃないかなと」
有料アカウントの一括配布は手軽な一方、誰がどれだけ使い、何に効いたのかが残りません。投資判断の材料がないまま、更新時期に「続ける意味あるんだっけ」という話になりがちです。
そして3つ目、実は一番効いたのがこれだったといいます。
「安全性と管理ができる。これで経営層の納得が得られやすかった。そして『みんな使っていいよ』と言える武器になり、はじめて社内での推進が可能となります」
「使っていい」と会社が公式に言えること。これが村上様にとって最初の突破口でした。
3. 「全ちゃんAI」を選んだ決め手 いるもの・いらないものを、一緒に作れたこと
「1年ちょっと一緒に取り組ませていただいた中で、必要なものと必要じゃないものを一緒に作り上げてこられたのが一番かなと思います」
既に完成しているAIサービスに会社側の業務を合わせるのではなく、自社の業務に合わせてAIの使い方や機能を設計していく。これが、カスタマイズAI導入の大きな特徴です。
「まずAImix機能(複数のAIモデルを用途で使い分けられる仕組み)です。汎用型AIの有料版を配るだけだと、それしか使えないですよね。全ちゃんAIは質問によって複数のAIが最適な回答を出してくれるので、そこが一番良かったと思っています」
文章作成、情報整理、スライド作成、POP制作――業務によって得意なAIは異なります。一つのAIを全員に配るのではなく、業務に応じて適したAIを選べる環境を整えられたことも、活用が広がった理由のひとつでした。
汎用のAIサービスは「何でもできる」代わりに、「自社の業務にどう当てはめるか」を各社員が自力で取捨選択しなければなりません。カスタマイズ導入の価値は、この負担を最初から取り除いておける点にあります。
4. 12名から175名へ。社内の半数に「全ちゃんAI」が浸透するまでのステップ
全ちゃんAIは、たった12名からはじまりました。それが1年後には175名。社員の約半数への導入に成功しましたが、ここまで一直線だったわけではありません。導入に難色を示す層にどう理解を広げていくか、村上様たちは一つずつ手探りで進めてきました。
ステップ1:「広げられる人」を集める
全社DXとは別に、生成AIに特化した検討会を12名で組成。集めたのは各部署の部長クラスでした。村上様が重視したのは、意外にも「AIを使える人」ではなく「社内にAIを広げられる人」。弊社渋谷も加わり、月1回の伴走がスタートしました。
ステップ2:「便利さ」ではなく「減った時間」を数字で示す
各部署の協力を得て、業務ごとの削減時間をヒアリング。「便利」という感覚ではなく、「これだけ変わった」という実績として見える形にしました。
「正直、手間はかかりましたが、どの業務でどれだけ効果があったかを聞き取りました。例えば議事録作成は、1時間から15分に短縮できました」
ステップ3:若手ではなく「上から」広げる
12名から50名への拡大で加えたのは、若手ではなく社長、支社長、管理職クラスでした。
「上の人たちからちょっとずつ触っていきました。年配の方は使う量こそ少ないですが、『こんな使い方するんだ』と反応が増え、会議の場でも『これAIで調べました・作りました』という発言が出てき始めました」
上長の発言や利用経験が、社内での利用者拡大を後押しする大きなきっかけとなりました。
ステップ4:IDの棚卸しと拡大
「使っていない人のアカウントを希望者に切り替えながら利用を広げ、現在は約90%が毎週活用。多い人では週200〜300回使うほど定着しています」
50人から60人へ、そして175名へ。使わなくなったIDを見極め、本当に使いたい人へ渡していく作業を続けてきた結果です。
5. 導入後に生まれた変化 資格受験9割、非エンジニアがツールを内製
社員の約9割が「生成AIパスポート」を受験
同社は、生成AIを安全に活用するためのリテラシーを問う民間資格「生成AIパスポート」の受験を社員に呼びかけました。
「強制ではないんです。ただ『受かった暁にはAIのID付与対象者にしますよ』という形にしたところ、9割くらいが受験してくれました」
強制ではなく受験率9割。学ぶ意欲を持った社員がそれだけ多かった、ということだと思います。
非エンジニアの社員が、業務ツールを作ってしまった
最も象徴的な事例がこちらです。
「社内AIでソースコードを作成して、見積書・注文書のようなものを自動で作れるツールを、ある部署が作ったんです。ソースコードの知識なんて何もない一般の社員が、作りました」
「何度も検証して、ハルシネーション(AIがもっともらしい嘘を出す現象)もないと確認できたので、業務ツールとして展開されました」
専門知識のない社員が、AIと対話しながら業務改善の仕組みそのものを作ってしまう。生成AIを単なる文章作成ツールとして使うだけでは、なかなか生まれない広がり方です。
村上様は、現状をこう冷静に見ておられます。
「ようやく175名。まだ半分くらいなんです。半分の人が使い始めてから、効果がどう出てくるかが分かるんじゃないかと。今はまだ小さい。ただ、それでも効果は示せたと思っています」
6. 導入後のサポート 「こまめに聞ける、相談できる」
AIツールは、導入して終わりではありません。使い始めてから「これはできないのか」「こうしてほしい」という要望が必ず出てきます。それが製品に反映されていくかどうかが、1年後の利用率を分けます。
「とにかく聞ける、相談できる。そこはすごくありがたく感じています。心強いところですね。私たちはシステムを直接持っているわけではないので、要望に対して渋谷さんが即座に対応してくださる。機能改善までのスピード感もジャイロさんにお任せしてよかったと感じています」
コンサルティングだけでもなく、システム提供だけでもない。業務の相談とAIの仕組みづくりを一緒に進められたこと。これが、カスタマイズAI導入の大きなメリットです。
7. 今後の全ちゃんAIに期待すること
「導入の目的として、業務の効率化と創造性の向上という2つの柱があります。効率化は、人が増えれば工数も増えるので、削減できる時間も比例して増えていく。そこは当然として、もう一つがやはり創造性です」
「AIを使っていなかった人が使うことで、どういう新しい『創造』が生まれるか。すごく楽しみですし、期待するところです」
先ほどの内製ツールの話には、続きがあります。
「そのツールで、業務が楽になる人がいる。その人がいなくなるわけではなくて、また違う業務、新しいことにチャレンジしてくれるのであれば、すごく良くなるのかなと」
効率化で浮いた時間を何に使うか。ここを設計しない限り、AI導入は「少し楽になっただけ」で終わってしまいます。
これから生成AI導入を検討する企業へ、4つのアドバイス
同じ地点に立つ企業へ、村上様からいただいたアドバイスを紹介します。
まず、最初から「広げる」前提で体制をつくること。「一部の担当者だけで進めてしまうと、そこで止まってしまうんですよね」。全社展開を見据えて、推進チームや担当体制をあらかじめ整えておくかどうかで、後々の広がり方が変わってきます。
次に、若手だけに任せないこと。ITに詳しい若手だけで進めると、個人の活用で終わってしまうことがある。組織を動かせる立場の人を巻き込むことが重要だといいます。
そして、成功体験をつくり、効果を見える化すること。業務時間の短縮など、具体的な成果を社内で共有する。感覚ではなく数字で示すことで、理解と活用が広がっていきます。
最後に、専門家に伴走してもらうこと。「AIの知識だけでなく、活用方法やシステム面まで支援してくれる伴走者がいることで、導入後の定着まで進めやすくなります」
自社に合うAIは「導入する」のではなく「一緒につくる」
生成AIを社内に取り入れる方法は一つではありません。既存の汎用AIサービスをそのまま導入する方法もあれば、自社仕様につくり込んでいくカスタマイズAIという選択肢もあります。
情報管理を自社で行いたい、利用ログを管理して費用対効果を説明したい、業務に合わせた環境をつくりたい、社内に広げるところまで伴走してほしい。こうした思いがあるなら、カスタマイズAIがお役に立てるかもしれません。
全日本食品株式会社様も、最初から「175名で使うAI」をつくったわけではありません。12名から始め、実際の業務で試しながら必要な機能を整理し、効果を確認し、少しずつ利用者を増やしていきました。
大切なのは、「どのAIを導入するか」から考えるのではなく、「自社のどの業務をどう変えたいか」という目的から考えることです。
まずは、現状のお困りごとをお聞かせください。何から手をつけるべきかの整理から、ご一緒します。
全日本食品様ホームページ▶ https://www.zchain.co.jp
